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| 日本経済新聞(2003.11.01) |
| 本格焼酎・泡盛を世界へ |
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大都市圏で急速に伸びる本格焼酎・泡盛市場。
その動向と可能性を探る。2002年度の本格焼酎・泡盛の出荷量は4年連続で史上最高を更新し、特に大都市圏での需要拡大には目を見張るものがある。急速に伸びる市場の動きを九州の蔵元事情に詳しい三井物産九州支社の中村鉄哉氏と焼酎アドバイザーの菱沼勇人氏に聞いた。
中村鉄哉
1959年生まれ。北海道大学経済学部卒。三井物産株式会社九州支社物資開発営業部部長。魅力あふれる九州の焼酎にスポットをあてた「幻の焼酎ルネッサンス事業」「新・伝説の焼酎ルネッサンス」の仕掛人。小さくともキラリと光る実力蔵元とともに全国に向けて30銘柄以上の焼酎を開発。
菱沼勇人
1961年生まれ。慶大経済学部卒。オーバルワン株式会社代表取締役。毎日数万行の消費者購買履歴をネット経由で取り寄せ、販売事業を基礎にした現場改善メソッドでヒット商品づくりに貢献する。焼酎アドバイザー、きき酒師として本格焼酎を切り口とした繁盛店づくりにも貢献。
菱沼 大都市圏では年々、本格焼酎や泡盛の人気が増しています。本格焼酎の健康志向やおしゃれに飲むというスタイルから、食中酒文化として世界各国の料理と合わせる楽しみにまで発展しています。蔵元もここ数年で大きく変化していますね。
中村 5年ほど前から九州中の蔵元をまわって感じたのは、「伝統プラス革新」という新しい経営をする蔵元が出てきたということです。
菱沼 中村さんは、そうした蔵元と酒販店、消費者を新しいカタチでつながれましたが、きっかけは。
中村 東京で1本数万円する焼酎を飲んだことがあって、これがおいしかったんです。それで九州に転勤になったらどこでも買えると思うでしょ。それがどこにもないんです(笑)。あるとき、小さな蔵元で飲ませていただいた焼酎が、それに負けないくらいおいしかったんですよ。
一方で、蔵元の意向とは別なところで高くて手に入りにくい焼酎があり、他方では、それに匹敵するぐらいの実力がありながらも販路に因っている蔵元がある。消費者は、おいしくて価値のある焼酎を飲みたいが、手に入らない。この需要と供給がマッチしていない状況をどうにかしてつなげたい。それが私の使命だと思いました。
菱沼 ひとむかし前は臭いとか安いイメージの焼酎でしたが、そうした実力のある焼酎が市場に出て来ると、焼酎の概念が変わりますね。今までワインや日本酒などしか扱わなかったところに、焼酎が現われてくる。さまざまなスタイルで提供してみようという飲食店が増えました。
中村 九州の小さいけれど志のある蔵元と一緒に立ち上げた『焼酎ルネッサンス事業』も、各蔵元には伝統だけにとらわれずに、消費者ニーズを掘り下げて、商品開発をするということに熱心に取り組んでいただいたんです。そこに味わい、パッケージ、ネーミングなど全く新しいプレミアム焼酎というカテゴリーが生まれました。消費者にとっては選択の幅が広がることですから、飲むことが楽しくなりますよね。
菱沼 今や本格焼酎・泡盛は世代や性別を超えて、日本伝統のスピリッツとして再定義され、蒸留酒文化が再発見・認識されたと思います。蔵元がきちんと発信して、日本人の心の中に本来持っている文化が見直されたというところが大きいと思います。しかし、これまで縁のなかった商社が焼酎業界に入るというのはご苦労もあったのでは。
中村 社内的にも商社が焼酎を扱うということに抵抗がありましたし、蔵元からの反応もさまざまでした。でも焼酎には蔵元の「自分たちが魂込めて世界に誇れる蒸留酒をつくっている」という思いが込められているんですよ。どの蔵元もそれぞれの地域の特産品をうまく活用した焼酎づくりをしていますよね。地場産業の発展にもつながっていると言えます。「ローカルだけどグローバル」「他にはない地場発信のもの」。これが九州や沖縄の本格焼酎・泡盛ですよ。
菱沼 確かに原料や製法、貯蔵にこだわったものなど、本格焼酎・泡盛は、世界の蒸留酒のなかでも、豊富な酒質を持っている特徴的なお酒だと思います。飲み方にも同じ焼酎でありながら、お湯や水で割ったとき、生(き)やロック、水で割って二、三日置いた割水(わすい)焼酎とかバリエーションがあります。いわば「水のカクテル」。これが世界に出たら、おそらく驚きを持って迎えられると思います。
首都圏でも消費者は豊富なアイテムのなかから、自分の基準となるお酒を見つけ、それが起点となって幅広い銘柄を楽しんでいく傾向にあります。その体験を通して焼酎の楽しみがもっと広がり、市場が成熟していくんじゃないでしょうか。
中村 焼酎・泡盛はすでに世界に発信できる要素は持っているんです。しかしこれからは単に売れればいいという考えではダメでしょうね。私たちのプロジェクトは新しい焼酎文化を育てあげ、底辺を押し上げて行くんだという志でやってきました。きちんと真面目につくるということ。それから、お客さまに本当に価値のある商品を適切に提供するシステムをつくることに苦心しました。
菱沼 さらに踏み込んで消費者は正確な情報を欲していると思います。ブームになるといろんなことを言う人がいます。一人歩きした情報が、いい文化を踏みつぶすようなこともあるんです。正確な情報を消費の現場まで共有できるよう、今まで以上に積極的な情報開示をやって欲しいですね。
中村 蔵元には焼酎を供給し続けるという使命はあると思いますが、地域文化をどう守り育てるかという観点では、原料調達などで安易な方向に流れて欲しくないです。そして、私たちも含め、焼酎業界全体が、消費者の支持が厚いということを糧に努力しなきやいけないと思います。 |
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