ルネサンス・プロジェクトは、地場に埋もれている幻の焼酎を発掘・復興・革新!


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日本経済新聞(2005.03.26)
〜拓く〜九州焼酎を全国へ海外へ
三井物産・九州マーケティング営業部長 中村鐵哉氏
日経新聞掲載
なかむら・てつや

1959年(昭34年)山口県生まれ。79年に北海道大入学後、82年から1年間米マサチューセッツ州立大に留学、84年北大卒業。同時に三井物産入社。九州支社への赴任前、92年から98年まで不動産部門に在籍、宅地建物取引主任者や中小企業診断士などの資格を持つ。九州に来るまで酒はあまり飲めなかった。「焼酎は次の日も残らないし飲みやすい」体に合っていたんですかね」という。
焼酎ブームの一端を担ってきたのが三井物産九州支社に籍を置く中村鐵哉マーケティング営業部長だ。九州各地の焼酎の蔵元を訪れ、個性的な商品を作り出して全国に売り込んできた。その道のりは「孤独な挑戦」の連続だった。そして今、海外市場に挑む。

「フランス人に九州の焼酎を飲んでもらう。他流試合はワクワクしますよ」

"焼酎戦士"はこう笑った。中村は23日、フランスのボルドー市へ旅立った。自慢の九州焼酎は大事にこん包して先に送ってある。31日にワインの名産地、ボルドーで焼酎の試飲会を開くためだ。焼酎との出会いは1998年、東京から福岡に赴任した時からだった。東京では見かけない焼酎が山ほどあり、しかもうまい。「情報量も商品量も東京と福岡に大きなギャップがある。商社のビジネスになると思った」中村が扱うのは「焼酎ルネッサンス」と名付けた約50種の商品群だ。九州各地の焼酎の蔵元と組み「決戦前夜」などといった名前の個性派焼酎を送り出す「これは」と思う蔵元を探しては口説き、商品を東京に売り込んできた。

今度のターゲットは海外市場だ。昨夏にはニューヨークで試飲会、今度はボルドーでの腕試しを敢行。ボルドーでは試飲会に300人近く集まる見込みだ。「スコッチの醸造所は半分を輸出で稼ぐ。焼酎もスコッチのように世界で戦える蒸留酒だ」と期待する。「酒には魔物が住む。住むような酒でなくてはならない」というのが持論。工業製品として低価格を目指すことはしない。「良い酒には、飲むことでパワーを得られるという伝説めいたイメージがある」中村の送り出す焼酎には物語を生み出す特徴が加えられる。例えば西郷隆盛の好きだったという「石蔵」、純米吟醸酒を蒸留して造った吟醸香のする「久保禄」といった具合だ。

自らも焼酎の魔物に取りつかれて走り回り、壁を突き崩してきた。2001年、不動産関連の部署にいた中村は焼酎を発掘しようと、たった一人で行動を開始した。社内の援軍はわずかで「安酒」「売上高はたかが知れている」と冷ややかだった。それでも一人きりで蔵元を回り、試飲し、ラベルデザインを考え、2002年1月に第一弾の商品を送り出した。中村は東京に売り出そうと蔵元の説得を重ねたが、これも一つの戦いだった。消費者が求める味を試飲会などで探り、蔵元に伝える。しかし、味に自信のある蔵元ほど「ウチはこれで百年以上やってきた」と中村の話に耳を貸さない。蔵元の自負を尊重しつつ新しい味を生み出すには時間がかかった。

2003年、焼酎ルネッサンスの商品群が揃い始めてからは酒類卸など既存の流通との戦いだった。味に自信があるとはいえ生産量は少なく知名度も低い。何度も門前払いを受けた。それでも粘り強く飲食店にも売り先を広げ、評判が広がるとともに扱う卸も増えた。2004年度の売上高は前年度比2倍の十億円に膨らむ見通し。本数ベースでは発売当初の25倍の月間10万本に一気に増えた。しかし、中村は安どの表情を見せない。海外や次の商品を見据えている。商社マンとして様々なマーケティング資料を駆使して焼酎ビジネスの将来性を語ることもある。しかし、中村のビジネスを支えているのは蔵元に対する信頼だ。「自分の焼酎はうまいという自信を持って造る。これが根底にあってビジネスになる」この哲学は揺るがない。=敬称略(西部支社木原健一郎)