ルネサンス・プロジェクトは、地場に埋もれている幻の焼酎を発掘・復興・革新!


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朝日新聞(2006.01.24)
地道に開発、海外デビュー
世界最高級のワイン生産を誇る街、フランス・ボルドー。名だたるシャトー(蔵)がひしめくこの街に今年、日本の芋焼酎がデビューする。

1月中旬、石造りの街並みに彩られた市中心部のフランス料理店「レ・サンク・サンス」昼時を迎えた店内では、30人ほどの客がテーブルを囲み、コース料理を楽しんでいた。経営者のマリレーヌ・ラファルジェさんが芋焼酎の瓶を手にテーブルを回る。「これは日本のショーチュー。一杯いかが?」「あら、良い味ね」会話が弾み、客が次々とストレートで試す。

輸出開始に先駆けて、店には約10銘柄の試飲用の焼酎がある。「イモのにおいも問題なく、評判は良い」とラファルジュさん。PRに協力するボルドー商工会議所のエマニュエル・ギットン・フラニョーさんは「異国情緒を楽しむ形で飲まれるのは」とみる。
新聞掲載記事 仏料理店で昼食中の客に芋焼酎の試飲をすすめる経営者(左)日本の酒とあって「カンパーイ」の声もあがった=フランス・ボルドー市で
ボルドーへの輸出を仕掛けたのは、三井物産九州マーケティング営業部長の中村鉄哉さん(46)。「世界最高の酒がある地で勝負したかった」と意気込みを語る。

6年前の出会いが始まりだった。九州の小さな蔵元を回ったとき、「芋焼酎は売れなくても仕方ない」とつぶやく声を聞いた。うまい酒を造っているのに、なぜだ---。持ち前のガッツがむくむくとわいた。

零細でも良い酒を造る蔵元の焼酎を集め、02年から国内での販売を大展開した。04年からロンドン、昨年はニューヨークにも輸出。アジアへの輸出は広がりつつあるが、欧米はまだ少ない。そこに商機をみた。「欧米で認められれば、より価値を高められる」海外での反応は確実に良くなっていると感じる。その確信を胸に、ボルドーにも乗り込む。
サツマイモは1600年前に中国から沖縄にもたらされた。100年後には鹿児島へ。芋焼酎は1700年代半ばに誕生したとされるが、長らく他の酒より劣る「安酒」とみられてきた。だが、健康志向を背景にした最近の焼酎ブームで、芋焼酎は一気に主役に躍り出た。日本酒造組合中央会によると、出荷量は01年度までの7年間は6万リットル台だったが、04年度は倍増の12万5千リットル。伸び率は米や麦などのほかの焼酎より圧倒的に高い。

ブームを支えたのは、地道な開発努力だ。中小企業に技術支援をする鹿児島県工業技術センターは96年、イモ臭さを抑える酵母を開発し、芋焼酎の飛躍に一役買った。開発にかかわった食品工業部主任研究員の峯和則さん(41)は「最近はイモの香りを好む人も増えてきた。今度は風味を高める研究もしてみたい」と話す。

独立行政法人・九州沖縄農業研究センター畑作研究部(宮崎県)は毎年、焼酎用や食品加工用に新しいイモを15種類ほど開発する。霧島酒造(同)はセンターからイモの提供を受け、年6〜7種類を試す。商品化できるのは7〜8年に1種類程度。それでも「芋焼酎の新しい魅力を開発したい」

三井物産の輸出計画に乗った会社の一つ、京屋酒造(同)は海外受けを狙い、新たにリキュールを開発した。芋焼酎にかんきつ類をブレンドした酒だ。従来の芋焼酎と一緒に輸出する。この商品を受け入れる予定のボルドー市のワイン販売会社社長、マクシム・アマさん(32)は「気持ち良い味」と評する。試飲用の商品をつい自分で飲んでしまうほど気に入っている。ボルドー向けの芋焼酎は1月末、第1陣が旅立つ。関係者が夢に描くのは、焼酎が世界の酒にのぼりつめる「シンデレラ・ストーリー」だ。

4世紀にわたり、日本の食生活の中に根付いてきたサツマイモが今、新たな舞台で活躍の場を広げている。その姿と、イモに賭ける人々を追った。(池田敦彦、市川美亜子が担当します)