ルネサンス・プロジェクトは、地場に埋もれている幻の焼酎を発掘・復興・革新!


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NYジャピオン355号(2006.06.01)
酒匠 菱沼勇人の のんだくれ日記
今宵の逸品 薩摩長太郎焼 黒千代香
NYジャピオン
「黒千代香(くろぢょか)」という酒器は写真のとおり、薩摩独特の焼酎用酒器であるが、漢字はどうやら当て字のようである。そもそも「ちょく」とか「ちょか」というのが酒器のことらしい。「ちょか」は「千代香」や「茶家」など当て字も様々である。当地の焼き物は古来「白薩摩」と「黒薩摩」の2種類があり、黒は庶民の焼き物だった。

この黒千代香、地元では「グレムリン」のように独特の使い方ルールがある。(1)水洗いはするな(2)直火は厳禁(3)焼酎は前の晩から割っておけ、などである。なかでも(2)は重要で、そもそもそろばんの珠のような形をしているのも置き炭でやんわりと燗づけするための形状らしい。安いものであれば、直火OKというものもあるが、地元最高峰の「薩摩長太郎焼」ではやはり「直火厳禁」とある。それにしても一般家庭では火鉢なんてものが置いてあるわけがない。このルールによれば酒器なのに燗づけできないということになる。最高級の12800円の黒千代香を買って帰って「直火厳禁」では怒る人もいるだろうに。

酒匠のお勧めはホットプレートや保温プレートの類である。紅茶がさめないように置いておくようなものがあれば一番いい。30分も置いておけば60度ぐらいにはなるので気長に待つことを厭わなければ、最高の芋焼酎を楽しむことができる。ちなみに黒千代香にあわせるぐいのみは「そらきゅう」がよい。底に孔があいていたり、円錐形をしているため一度手にしたら杯をテーブルに置くことができない。満々とついだ焼酎に顔を近づけていく姿はまさに、「のん兵衛」、底の穴をふさいだ指を舐めていたらこれぞ本物の「のんだくれ」である。

プロフィール/菱沼 勇人

1961年神奈川県生まれ。オーバルワン株式会社代表取締役。SSI認定酒匠、きき酒師、焼酎アドバイザー、SSI東京支部役員。学生ベンチャーで起業。98年に独立創業し現職。ヒト、モノ、カネ、ITにプラスして地場産業など日本伝統文化の「イキ」を追及する。日本再生の現場主義経営者。

酒匠(さかしょう:Master of SAKE Sommelier)とは「きき酒師」の上位資格、目指すのは究極のテイスター。日本酒の酒米品種もきき分ける嗅覚を持つ。SSI認定。