ルネサンス・プロジェクトは、地場に埋もれている幻の焼酎を発掘・復興・革新!


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モノマガジン
世界にはばたくニッポンの酒
〜世界のジャパニーズレストラン事情からみるSAKE〜

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サンタモニカのAKWAはもはや日本人向けの寿司レストランではない。88あるディストリクトの半数にはこのようなちょっと洒落た和風ダイニングがあるといっても過言ではないほど、LAにおいて寿司は浸透している。

寿司職人のJOEはロックバンドでベースでもやらせたら10代の女の子にとても人気の出そうなルックスをしている。180cm以上はあるスリムな体躯で、彫りの深いシャープな顔立ち、ちょっとシャイな話し方はまるで日系の職人のようである。日本語も話すがじつは韓国人とスペイン人とのハーフとのこと。

このような寿司職人は当地ではいわば「二世職人」ともいえる世代である。「一世職人」は元祖和食の開祖であり、多くの場合は日本の有名店で修行してチリやペルーなどを経てLAやNYなどの大都市に渡ることがある。

海外在住の一世職人は寿司職人を目指すJOEのような若者に寿司の握り方ばかりでなく、職人気質や仕事への取り組み姿勢、それらすべてを包括した「粋」というものをローカライズ(現地化)することで新しい食の文化を定着化させてきた。JOEのシャイネスは「おやじさん」と彼が呼ぶ一世職人に叩き込まれた職人としてのプライドに由来しているのであろう。本来は握りで勝負したい職人ながらマリブの有名人のホームパ−ティのために1200個ものカリフォルニアロールを作ることに飽き飽きしている現状がある。

LAの寿司、日本食文化はすでに二世、三世職人によって骨格が構成され、当地のアッパーミドルの生活習慣として和食は確立した文化となっていた。このような寿司ダイニング業態でのリーダーが、同じくLAの「KATANA」である。16時以降は予約の電話が鳴りっぱなし、20時には満席、スタンディングで飲み始める人々がテラスにあふれるトップエンドの人気店である。創作和食のメニューはすべて現地化(ローカライズ)したもので日系の顧客は5%にも満たない。白人比率が高く、それも金融系やIT系など高学歴、高収入の顧客、「ジェットセット」と呼ばれる特別な階層やハリウッドのセレブリティが対象の高級店である。和食業態のトップエンドはフランス料理やイタリア料理の超高級店にも負けない地位を確立し、KATANAのようなファインダイニングから隠れ家風の超高級寿司屋までLAにおいては活況を呈している。そして特筆すべきは、酒(SAKE)メニュー掲載銘柄数が40にもおよび、日本でも入手困難な人気銘柄が数多く並んでいるということだ。「久保田得月」「末廣玄宰」といえばわかっていただけるだろうか。特別な顧客にしか紹介しない特別な清酒まで含めれば50は下らない銘柄数となる。

清酒「SAKE」は海外では「サキ」と発音される。米で作った醸造酒として以前は「ライスワイン」と呼ばれたこともあったが、現在は「純米(JUNMAI)」や「吟醸(GINJO)」「大吟醸(DAI-GINJO)」という言葉さえ知られるようになりつつある。

国内市場と異なり醸造アルコールを添加した「本醸造酒」はリキュールとなり(高額課税されるため)対米輸出ができない。米国ではアル添しない「純米酒」だけが販売されていることも好都合であった。国内市場の冷え込みから海外進出を狙って10年以上前から活動を開始した蔵元はそれまでの現地産「大関」とはまったく異なるアプローチで高級和食のソムリエ達に支持されるようになった。

ここ数年の「JAPAN COOL」の勢いに乗れたことも清酒市場の拡大に好都合であった。日本のアニメ、映画、ゲーム、車、日系デザイナーの活躍など理由はさまざまであるが、先日7月5日の朝日新聞にはパリからアジア大陸を横断してあこがれの日本へ行こうとした16歳の少女2人がVISA非所持でポーランドからベラルーシに出国できず、保護された記事が載っていた。大陸横断してまで行きたい「JAPAN」にどのような夢を投影しているのかは理解できないがムーブメントの象徴的なヒトコマである。

和食ブームはボストンのエリート達からスタートしたという意見もある。教授の趣味が学生達を巻き込んで和食の知的イメージを作り出し、その後卒業生は億単位の年収を持つ人々となって生活習慣として定着した。肥満が深刻な問題となっている米国では和食が具体的な対策となった。

こういった理由からも、LAの状況は決して特別なものではない。ロンドン、NY、シドニー、シャンハイなど日系人比率の低い和ダイニングの店が同時多発的に巨大都市のムーブメントとして存在している。

先行したのは間違いなくNYの「NOBU」であろう。さまざまな評判は耳にするが和食を現地にローカライズし、トップレストランの地位を築いた点で最大の賛辞を送るべきだ。NOBU出店の歴史はいわば現地にローカライズした和ダイニング文化の広がりを示す。'94年NYに1号店をOPENし、'97年のロンドン以降、東京、ラスベガス、LAマリブ、ミラノ、マイアミ、ダラス、NY57丁目、ロンドンBAKER St.と展開しNOBUは今や3業態16店舗を展開する巨大レストランチェーンとなっている。今年4月に訪問した57丁目店では開放的な吹き抜け空間に清酒の大型樽をディスプレイしエントランスに特別な印象を与えていた。

ロンドンはNOBUが二番目の出店場所に選んだ意味のある都市である。以前はうまいものがないと酷評されていたが現在ではEU圏からグルメ達が好んで食事に行く価値のある都市となっている。一昨年から6回はロンドンを訪問しているが毎回行くのが「ZUMA」そして「ROKA」である。ランチでも1万円を下回ることがない高級店で、ZUMAは清酒、ROKAは焼酎を主体に提案している。ドイツ人経営者による和ダイニングレストランで、サービスクオリティが高く、数秒手を上げればスタッフが来る。焼酎はROKAが世界のトップレストランの中で挑戦的にスタートし、すでに2銘柄をメニューに掲載している。本年'06年のモンドセレクション最高金賞受賞の「河童の誘い水」、それに「平八郎」である。この2銘柄は本格焼酎として世界のトップレストランのメニューに掲載された始めての芋焼酎であろう。ちなみに河童の誘い水は、厳選された地元の甘藷を使い、手麹甕仕込みでつくられた宮崎の洗練された芋焼酎。現地のレストラン業界誌「Square Meal」ではこの夏、すでに清酒と焼酎がロンドンで認知され始めたという記事が掲載された。

ロンドンのムーブメントは間違いなく世界のトップレストランに波及する。清酒に続き焼酎が地位を確保するまでさほどの時間はかからないかもしれない。今年は年初からこれまでシンガポール、NY、LA、パリ、ブリュッセル、ボルドー、マドリッド、バルセロナ、ロンドン、シドニーなど世界の10都市を訪問しているが複数の都市で「獺祭(だっさい:山口県、純米吟醸)」の話しを聞いた。磨き23%という話題性がトップレストランのバイヤーに強い関心を持たれている。東京の情報がロンドンやNYに飛び火する、もしくはロンドン発で世界に波及してゆくだろう。

数年前までは顧客の7割はワインを注文していた。残りの3割のうち、8割までもが「HOT SAKE(熱燗)」を注文していた。しかしながら今、GINJOを冷酒で楽しむイノベータが目立ちはじめている。今後は焼酎も巻き込んで新しい動きを作り出していくはずだ。「KAPPA(河童の誘い水)」もそのひとつとなるだろう。求められているのは世界のトップレストランで要求される最高品質のもの。現地レストランで100ドルのワインに匹敵する価値を生み出すことができるのか。自問して挑戦する蔵元が生き残る。

ロンドン、パリ、ブリュッセルなど世界のトップレストランで導入されている本格焼酎「河童の誘い水」「平八郎」「壷中の玉響」「十酔伝説」

プロフィール/菱沼 勇人

オーバルワン株式会社代表取締役。SSI認定酒匠、きき酒師、焼酎アドバイザー、SSI東京支部役員。1961年神奈川県生まれ、慶応義塾大学在学中の84年に学生ベンチャーで起業、98年に独立創業し現職。情報通信など大手企業の商品・サービス開発や事業開発に20年以上従事、数多くのヒット商品を手掛ける。ヒト、モノ、カネ、ITにプラスして地場産業など日本伝統文化の「イキ」を追求する。また、年間40日から60日は海外に滞在し、現地のトップレストランを食べ歩く。現在、モノ・マガジン特集号(毎月16日発売)で「焼酎道楽」を連載中。

酒匠(さかしょう:Master of SAKE Sommelier)とは「きき酒師」の上位資格、目指すのは究極のテイスター。日本酒の酒米品種もきき分ける嗅覚を持つ。SSI認定。